微分の変数変換に引き続き積分に関する変数変換の例題を見てみよう。
<例題5>
正規分布を利用した誤差関数exp(x2)の積分値を求める。

変数変換して、式の形を合わせる。

もとの積分は平均0、分散1の正規分布であるので、全域の積分(z→∞)値は1となる。従って、

左辺は偶関数であるので、積分領域を[0,∞]とすると、得たい式が求められた。
<例題6>
極形式への変数変換のヤコビアンを求める。

従って、
![]()
となる。
<例題7>
多重積分であっても、変数変換がうまくいくとヤコビアンを求めなくても変数分離型に持ち込んで解くことができる場合がある。ベータ関数とガンマ関数の関係公式を求めよう。2変数はすでにガンマ関数とベータ関数の項で求めてあるので、ここは3変数である。求めたいものは次のものである。

t=y/(1-x)と変数変換したいので、tを使いやすいように式の形を合わせる。

y=(1-x)t、dy=(1-x)dtなので、積分領域に注意して、

得たい式が求められた。変数の数をnに拡大すると、さすがにこのようなうまい手はみつからないので、本格的な積分の変数変換が必要となる。
<例題8>
求めたい関係は次の式である。

この証明を行うにはn-1次元の極座標に変数変換するのがひとつの方法である。極座標への変換のヤコビアンは多変数を扱うときは必須のテクニックであるので、長くなるがその説明から始めて、求めたい証明を行おう。
<例題8の補題:極座標への変数変換>
n次元のデカルト座標から極座標への変換を行おう。とはいってもいきなりn次元で考えることは大変なので、まず2次元から3次元に拡大することでイメージをつかもう。2次元では座標(x,y)は、原点からの長さr=√(x2+y2)、x軸との角度θとすれば、
(x,y)→(rcosθ,rsinθ)
となることを知っている。では3次元ではどうなるだろうか。それは次のグラフを見るとよくわかる。

軸の取り方が後ほどの計算のためになじまない向きになっているかも知れないが、回転すればよいので気にしない。すると、
(x,y,z)→(rcosα,rsinαcosβ,rsinαsinβ)
となっている。一番最初にX軸の高さxを考えると、その角度αによって、rcosαである。次にY軸の長さを考えると、YZ平面での(x,y,z)を射影した(0,y,z)の長さは、先ほどαを使えば、rsinαとなるから、Y軸との角度をβとすれば、y=rsinαcosβである。さらにzは新たな角度を考える必要が無いので、z=rsinαsinβとなる。次元を射影によって一つずつ下げながらそれぞれの距離を求めるという手続きを踏んでいる。この方法を続けていけば、一般にn-1次元座標では、(t1,・・・,tn-1)座標は極座標によって、

と表されることが理解できるであろう。ここで、θはそれぞれの軸との角度を表しており、rはn-1次元での原点からの長さ、r=√(t12+・・・+tn-12)である。このことは後に、r2=∑ti2として利用する。
<例題8の補題:極座標への変数変換ヤコビアン>
続いてこの変数変換のヤコビアンを求めておこう。いきなり結論を書くなら、

となるのだが、これもいきなりでは大変なので、3次元でやってみよう。

3行3列の行列式であれば強引に計算できて、上記のとおりとなるのだが、n-1に拡大することが目的であるから、アルゴリズムを確認しておく。行列式の展開を行えばよい。常に1行目を展開していく。何故ならこの例では明確ではないが、ヤコビアンを確認すれば分かるように、1行目はrとθ1しか含まれないから、いつも1、2列以外はゼロとなるからである。そして1列目と2列目の共通項をくくりだし、3列目(以降)に手をつけないでおくと、次数の下がった同一の行列式が二つの項に残る。そこでsin2θ+cos2θ=1を使っていけば項数を増やすことなく整理ができていく。次数の下がった行列式もやはり第1行は1列と2列以外はゼロとなっているので、この手続きを続けていけば、さきほどの多次元のヤコビアンが求められることとなる。上の3行3列の行列式の展開を行っておこう。

従ってあらためて書くまでも無いが、
dt1dt2dt3=|J|drdθ1dθ2=r2sinθ1drdθ1dθ2
さらに4次元では、
dt1dt2dt3dt4=|J|drdθ1dθ2dθ3=r3sin2θ1sinθ2drdθ1dθ2dθ3
である。計算練習というより、行列式の展開を自ら一度確認されるとよい。
<例題8の証明>
さて、以上の準備をしておいて、例題8の証明に取り掛かろう。もう一度目標の式を載せておこう。

まだ変数変換が続いていく。
三角関数形式のベータ関数に持ち込みたいので、x1=t12,・・・,xn-1=tn-12と変数変換する。このヤコビアンは対角要素しか残らないので、
![]()
となるから、
![]()
ここでようやく先ほど補題として準備した極座標へと変数変換する。繰り返しが多いことが見えるので代表的なものをとりあげてチェックする。
まずrは各tとおなじだけあって、ヤコビアン分が追加されるので、
![]()
すでに確認したr2=∑ti2を利用している。この効果で積分が独立して扱えることとなる。
ついでθだが、一番面倒そうなθ1を計算する。
![]()
残りはどんどん減っていくだけなので同じように考えて、全部まとめると、

ここでさらに、r2=uと変数変換すると、du=2rdrなので、第1項は、

第2項以降はそのまま、ベータ関数からガンマ関数になるので、3変数の時と同じように分子分母が打ち消しあって、求める式が得られる。