このページはJavaScriptを利用しています。 JavaScript対応ブラウザで、JavaScriptをOKとしてご覧ください。 数理ファイナンス[MathematicalFinance]

5.リスクコントロール

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リスクヘッジの目的

リスクヘッジは、その言葉通り資産の価値変動を中和することを目的とする行為である。値上がりすると考えた資産が希望通り値上がりすればなにも問題は無いが、値下がりした時に蒙る損失をあまり大きくしたくない、あるいは一定の水準で押さえたい時に利用する。もちろん売り買いは逆でもよいが、一方的な取引のリスクを定めた範囲以内に押さえることを目的とする。

よくある誤解は、リスクヘッジという手法はリスクを削減しながらリターンをあげる手法と思い込んでいることである。ファイナンスの基本的な知見のひとつは、幾度もくり返しているが、無裁定であるならばリターンはリスクに応じて獲得されることである。したがってリスクヘッジすれば、リターンは下がると考えるほうが正しい。リスクヘッジの典型例は、三ヶ月後に商品の取引をドルでしなければいけないときに、いま円とドルの為替の先物を組んでしまえばリスクは無くなり、ほぼ完全にヘッジされる、というようなケースを想定されるとよい。これは三ヶ月後に為替の変動を受けて商品取引の利益を為替の損失で吹き飛ばすことが無くなると同時に、為替の利益を得る機会も諦めていることである。リスクヘッジを誤解されている多くの方は、このケースの場合、為替の損が出たときはリスクヘッジの効果を認めながら、為替の利益が出ているときに機会損をしたといってリスクヘッジの有効性に疑問を投げる主張されることである。この主張が合理的でないことは、もはやくり返すまでもなかろう。

リスクヘッジはそれそのものが目的ではない。あくまでもリスクをコントロールしようという目的の元での手段なのである。単にヘッジしたいだけならば、最初から安全資産を買えばよいのである。このことはポートフォリオの検討のときと同様である。そして目的は人それぞれにお有りだろうから所与である前提で議論を行う。この目的と手段の関係はいつのまにか忘れがちであるが、特にリスクに注意が向けられるとその傾向が強くなるので、お節介ながら述べたまでである。

リスクヘッジの方法

リスクヘッジはさまざまな取引に伴う不確実性の削減であることを忘れてはならない。もっとも簡単なリスクヘッジ手法は資産を逆張りすることである。要するに「買い」立てているならば、同額を「売り」立ててれば、リスクは無くなる。しかしこれではもともとの取引量を減らしているに過ぎないし、上述のとおり何のために取引を行っているかわからない。しかし、リスクを適当な水準とするために取引の総額を調整したくなり、売買単位の異なる資産で売買相殺して調整することはありうる。何か異なる資産を利用してリスクヘッジを試みることが考えられ、その典型が原資産と派生資産を相互に利用したリスクヘッジである。

そしてさらに現実には取引費用が異なっていたり、取引時期や時間が相違していたり、原資産と派生資産の価格が無裁定条件や均衡に従うための時間的な遅延が生じたりすることは常識であって、そういう間隙を突くことも現実的な取引手法であるし、効率的なリスクヘッジ方法なのであろう。

以下では、先物によるヘッジにおける最適化と、ブラック・ショールズ公式を前提としたオプションのヘッジについて説明しよう。そして、すこし本題とそれるが、求められたヘッジ比率を利用して、宿題に残してきたブラック・ショールズのオプション公式が元の偏微分方程式を満足していることを確認しよう。

  1. 最小分散ヘッジ比率

  2. オプションヘッジ

  3. BS偏微分方程式の確認

市場のリスクコントロール

どれくらいのリスクを許容するかということがリスクコントロールの中心にある。それはリスクは常に安全資産利子率に上乗せするプレミアムを資産の価格、収益率に要求しているからである。個々の投資家は自ら許容するリスクの範囲を決定し、リスクコントロールのためにリスクヘッジの手法を活用する。ではたくさんの投資家が集まる市場のリスクコントロールはどのようになっているのであろうか。すなわち市場が操作するリスクコントロールはどういったものとなっているのであろうか。これまでのモデルを利用して資産の超過収益率がどのように表されるかを確認してみよう。すこし先走ってその結果を述べるならば、市場が無裁定であるならば、各資産のリスク当りの超過収益率は等しくなるのである。モデルの確認の後にそのことを簡単な形式で証明してみる。それゆえにリスク当りの超過収益率をリスクの市場価格と呼ぶのである。これは裁定定理の別表現となる。そしてもし無裁定条件によってリスク当りの超過収益率が等しくなるのであるならば、定理を使ってブラック・ショールズの偏微分方程式が導かれるであろうから、その検証も行ってみよう。

  1. 二項モデルの超過収益率

  2. 連続モデルの超過収益率

  3. 無裁定条件とリスクの市場価格
    (ブラック・ショールズの偏微分方程式の導出)

さまざまな意図の取引が集まる市場では、その結果として各資産のリスク当りの超過収益率に等しい値を付与する機能を果たすというのが市場のリスクコントロールの姿となる。

リスクコントロールにおける伊藤過程の応用

実務的なリスクコントロールでは正規分布の利用例が多い、リスクは不確実性であるから、当然何らかの確率分布を活用することとなるが、その場合やはり中心極限定理を基礎とする正規分布の利用が多くなるのは納得できるであろう。以下ではブラック・ショールズの株価過程(伊藤過程)と正規分布を応用した二つのリスク推定の代表事例を説明しよう。いづれも株価過程の変数変換伊藤の補題を思い出しておいていただくと分かりやすいと思う。

  1. バリューアットリスク(VaR)

  2. 企業倒産リスク

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