先渡契約(フォワード契約)とは、将来の定められた(満期)時点で、定められた(先渡)価格で原資産を売買する契約である。先渡契約は取引したいもの同士が相対で決めるから、その契約の内容どおりとなるが、いま何かの事情の変更があって、満期以前に先渡契約を解消したくなったとする。ところが別の第三者が、同じ条件でこの契約を引き継ぎたかったとしよう。契約そのものはなんらかの資産として価値があると考えるのは自然であろう。ではこの資産=契約の値段はいくらとなるのだろうか。先物取引とは、このような先渡契約を満期以前に売買する取引であって、先物市場とはこのような先渡契約そのものを売買する市場のことをいう。デリバティブのイントロダクションとして、先物取引の価格を調べてみよう。
先物価格の算出は無裁定の条件を利用する。先物契約は所詮将来に行われる取引であるから、現在のキャッシュの動きはない。そこで、現在価値がゼロとなるような複数の取引を作り出し、同時に将来の不確実性がなくなるような取引の組み合わせとなるようにする。すると無裁定条件によって将来価値もゼロとできることから、先物の現在価値を割り出してくる。先物価格が浮かび上がってくる具体的な取引の組み合わせを考えてみよう。そのやり方は次のとおりである。
| 現在 | 将来 |
| 原資産の買い(-S0) | 原資産の売り(St) |
| キャッシュ借入(S0) | キャッシュ返済(-ertS0) |
| 先物契約(キャッシュなし) | 先物決済(f0-St) |
| 現在 | 将来 |
| 0 | f0-ertS0 |
この結果は前述のとおりふたつの意味を持つ。まず第一に将来の価格の中に不確定なものは含まれていない。先物契約の中で不確定なものは将来の原資産の価格Stであるが、上のような取引を積み重ねる(ポートフォリオを構築する)と、それは相殺されて消えてしまうのである。そして第二に、現在の価値がゼロの取引は、将来の不確実性がゼロであるなら、やはりその将来の価値はゼロでなくてはならない。なぜならゼロでなければ、裁定の機会が発生してしまうからである。したがって、f0-ertS0=0となるから、
f0=ertS0
と表されることになる。すなわちこれが先物取引の理論的な価格になる。
無裁定条件によって価格が導出されているのであるから、裁定定理を適用して別の形で先物価格を求めてみよう。
いま将来の場合が二つであるとする、先物の現在価値はゼロであることを利用して、市場が無裁定であるなら裁定定理により、
B=Bertz1 + Bertz2
S=S1z1 + S2z2
0=(f0-S1)z1 + (f0-S2)z2
となるzが存在する。一行目の式より、z1+z2=e-rtであるから、2行目の式とz1+z2を三行目に代入すれば、
f0=ertS
によって先物価格が求められることになる。こちらのほうがはるかに分かりやすい。
以下の項はブラック・ショールスの偏微分方程式を用いて先物価格を導出する方法を説明する。ブラック・ショールスの偏微分方程式は後のオプションプライシングで解説するテーマであるのでその後に立ち戻られるといっそう分かりやすいと思う。しかし、ここでは偏微分方程式を解くことに力点をおいてはおらず、変数変換がほとんどであるので、内容は十分理解できると思う。前提として認める公式や定理は後に触れるので、以下ではあまり細部に拘泥せず、大体の組立てイメージをつかむ後のための準備作業と考えられたい。