リハビリ
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(1) 一 般 論 (2) リハビリの心得 (3) 目  的
(4) 上肢訓練の意味 (5) 私のリハビリ (6) 指の動きづくり
(7) 腕の動きづくり (8) 発 症 時 (9) 足の動きづくり
(10) 字を書く練習 (11) 拍手の練習 (12) リハビリは一人では出来ない
(13) 4度目の正月 (14) 鏡の効用 (15) 鍛えて力をつける必要はない
(16) 5年経って判ったこと (17) 綺麗に歩くには (18) 筋力トレーニングのやり方
(19) トレーニングマシン (20) ストレッチを十分に (21) CI療法:上肢集中訓練の効果
(22) NHK生活ホットモーニングは脳の可塑性とリハビリがテーマ (23) NHKスペシャル「闘うリハビリ〜脳が持つ可能性」
  

(1) 一 般 論

失った脳機能をどこまで再構築が可能か、言換えれば脳の可塑性がどれだけあるかへの挑戦です自分の身体でそれを確認したい。

一般的に脳卒中のリハビリは、手足の機能や言語の機能を回復する訓練という側面より、機能障害の結果生じる生活上の問題点を克服して、もう一度生活を取戻すための訓練だと言われます。

つまり、6ヶ月から1年で、これ以上改善しないプラトー状態になるので、それ以降は 残された機能を最大限に活かして、失われた機能を補うよう訓練すること。そして、自分の 身体の機能を代替する補助具を活用していくのだと。

この考え方を固定的に受け取る医療関係者や一般の人に多いが、私は大いに不満である。 脳卒中の部位、大きさ、治療開始までの時間の経過状況、意識レベル、また年齢等々個人差 が非常にあると思います。6ヶ月はあくまで目安であって、医療関係者はもう少し患者一人 一人の状況を念頭に肌理細かい対応を是非ともお願いしたい。

私のように、1級1種でも2年経ってから指に動きが出て、今も月単位で改善が続いて いるケースだってある。 肝心なことは、後述するが脳に刺激を与え続けることだと考える。

次章の○ 脳と運動もご覧下さい。


(2) リハビリの心得


動いていた身体が脳梗塞により不自由になった精神的ショックの大きさは、健常者 にはなかなか理解は難しい。「動きづくりのリハビリテーション・マニュアル」より抜粋。

『リハビリの心得』には次のようなことがあげられる。
@ 自分の努力
     本人の努力が回復のために最重要である。
     周囲の人は、動くようになる希望があることを伝えてあげる。
A 希望は少な目に
     初めから大きな望みを持つのではなく、やさしい、小さな動きの
     積み重ねが日常動作につながることを理解する。
B 疲労は避ける
     一度にたくさん動かせば、早く動けるようになるものではない。
     疲労は筋力強化につながらないので、決してやり過ぎないように。
C 年齢を考える
     年齢的な体の状態を考えて、無理強いしない。



次に身体のどの場所で動きが妨げられているのかの判別が必要です。脳に何らかの障害があり 通常の動きを獲得できない場合、脳の運動中枢から運動器までの伝達経路に障害があることが多い。

肘の動き
@肘の伸展は屈筋の力が抜けて、肘関節が十分に伸び、肘の屈曲は伸筋の力が抜けて前腕が 上腕近くまで曲がる。

A肩の力を抜き、手を体の前方に水平まで上げる。その状態から手の平を下に向けたり(回内)、 逆に手の平を上に向ける(回外)ことができる。


「動かしなさい」と大脳皮質の運動領野に命令が行くと、「動かしましょう」とその動きに必要な 各部(首、体幹、手、足)に命令が降りて行く。しかし、途中に障害があると、そこから発せられる 異常な刺激が、大脳からの命令を邪魔して、異常な緊張や不随意な動きとして現われる。


また、正常な脳細胞と障害を受けた脳細胞が隣り合わせになっていて、障害を受けた脳細胞が 、正常な脳細胞に悪い刺激を与えてしまうために、異常な動きが出てしまうことも考えられる。


肘の動きを妨げている要因
@肘が伸びないのは、上腕二頭筋(曲げる筋)の緊張が抜けないためか、あるいは上腕三頭筋(伸ばす筋)の筋力が弱いためであり、肘が曲がらないのは上腕三頭筋の緊張が抜けないか、上腕二頭筋や上腕筋(曲げる筋)の筋力が弱いためである。

肘が屈・伸交互に動かないのは、同時拘縮といって屈筋と伸筋が同時に緊張して、相反性神経支配がうまく働かないためである。

A手の回外動作ができないのは、回内拘縮といって肘や手関節が屈曲し、手首や肘の屈曲動作を伸展動作に切り替えるのが困難なためである。

(3) 目  的

次の三点に集約される。

@ 拘縮を除く
筋緊張異常を抑制するために、筋や腱を他動で伸展させ緩める。
屈曲している部位を伸展させるためには、屈曲しようとする異常な緊張を少なくする必要がある。

A 筋力強化
関節包が柔らかくなり、腱が伸び、筋緊張が緩んだら、次に拮抗筋(緊張の強い筋の反対の筋)の筋力強化を図る。

例えば、屈曲している時は伸展するための筋力、内転している時は外転するための筋力、内旋している時は外旋するための筋力強化を図るということ。

また、抗重力筋(立ったり、座ったりする姿勢を保つための筋)の強化も大切である。

B 中枢の運動系の伝達経路の形成
自主的に正しい動きをするように訓練することによって、正しい動きの刺激が脳に伝わり、脳から降りてくる コントロール系(伝達経路)を形成する。身体の動きを統合する神経伝達路を発達させる。

それには、動きの分離では体幹と脚の分離、上肢と下肢の分離、屈・伸交互動作の分離、ローテーションによる 左右の分離、手指の分離(巧遅性を高める、細かい仕事ができる)などの発達を促すことが必要である。

手についてはまず基本的な動きを身につけていくことにより、身辺自立のための日常生活動作(ADL)の 訓練をしやすくなる。例えば、入浴は膝立ち位が保つことができ、脚の屈・伸交互動作ができれば、 浴槽に出たり入ったりが自力でできるようになる。

    (「脳の世界」のページの(15) 脳の運動機能回復の順序 を参照)
   

(4) 上肢訓練の意味


大脳皮質の運動領野は、身体の各部に運動を命令する場所であるが、その中で手の領域は大変に広く、特に親指の占める割合が大きいことが知られている。 

二足歩行を確立したヒトは、前肢すなわち手を自由に使いこなすことが出来るようになり、手を使ったさまざまな活動をしていくことで脳を発達させ、さらに言語能力を発達させていった。

<手の役割> 

@バランスをとる手
歩行をする際、足場の悪いところを歩くときなど、両手を使ってバランスをとるように、手には移動運動や安定した姿勢をとるためにバランスを補助するはたらきがある。
A体を支える手
杖やクラッチを利用したり、階段で手すりを利用したりするように、手で体を支えることで歩行の補助を行うことができる。転びそうになったとき、反射的に手が前に出て、体を防御するのも体を支える手の働きである。
B表現する手
大脳の運動野で言語を司る部位と、手を司る部位が接近しており、そのために話をする時にはたいてい手振りを伴うという説もある。

(5) 私のリハビリ

発症から2年以上の間、手の平と足の甲がむくんで腫れていた。またモモ、ふくろはぎ、そして二の腕は逆に筋肉が落ちて細くなっていた。左右の手足を比べるとその違いははっきりしていた。

ムクミの原因は、指先のような末端の毛細血管の血液の循環が不十分で、澱みが生じるためらしい。自分で動かせないために、健側に比べてどうしても運動量が足りなくなる。とにかく動かして血の廻りをよくすることだ。私の場合ムクミが出なくなったのは、指の内転・外転、屈曲・伸展、手首の回内・回外などの動きが出来るようになってからだ。

筋肉は使わないとアッという間に落ちてしまい、元に戻すには何倍もの努力が必要だ。発症から一週間動けなくてベッドに横になっているだけで、筋肉が細く(落ちて)なってしまう。

一度細くなった筋肉を太くすることは、健常者が筋力トレーニングで鍛えるようなわけにはいかない。決して自己流ではやらず、医者・理学療法士・作業療法士の指示に従うことです。ただ筋肉についての正しい知識はもっている方がいい。筋力トレーニングはそれからだ。

速く戻そうと無理してやり過ぎると、強い屈筋を更に強くしてしまうことになって、逆効果になる。例えば二の腕を鍛えようと、上腕三頭筋(腕の裏側にある伸ばす筋)の筋力の強化を図るつもりが、逆に拮抗筋である上腕二等筋(腕の表側にある曲げる筋)の方が強化されて緊張が強まることになりかねない。
そして、日常の全ての行動がリハビリになるのであり、時間を決めたり、リハビリの種類を最初から固定したりせず、自由・気ままにやること、これが継続していくコツ。


更に、脳のあらゆる機能を総動員する。運動領野以外に、感覚・視覚領野なども活躍させる。

例えば、全身が映る鏡を使う、あるいはガラスに映る姿を見ながら、患側と健側の動きの違いを目でチェックする。動きの情報は末端の神経から脳に向かって上っていくが、同時に皮膚で感じる感覚情報も上っていくし、目から入る視覚情報も脳に集まる。

これらの情報に基ずき運動連合野で設計図(プログラム)が書かれる。その指令が運動野に伝わり、運動野から、この筋肉をこれだけ収縮させろという指令が脊髄の運動神経に送られる。

この一連の動きを円滑に行うために、小脳が運動の指令と実際の動きとを比べて、必要な修正が加えて徐々に正しい動きに修正していく。

病院のリハビリ室の壁は、一面鏡になっており、鏡を見ながらリハビリする患者が多かった。理学療法士が言っていたが、鏡に向かって両手を左右対称に動かすことが、効果的であると。

私の場合、動きが出るまでは、筋の拘縮を防ぐこと、そして利き手変換に重点を置いたものだった。これは、ちっとも面白くないし、いつまで続ければいいのか、そしてこれをやれば改善する保証もないし、精神的にはキツイ時もあった。でも、この地道な積重ねが2年後に実を結んだ。

動きが出始めてからは、拮抗筋の筋力強化に重点が移っていった。同時にリハビリのメニューが比較にならない程増加した。改善のスピードも年単位から月単位へと加速している。

(6) 指の動きづくり

指については入院中から一番こだわっていた。

健側の左手で、麻痺側の右手親指の外転(反り返し)とか親指以外の四指の屈伸などを繰り返し行っていた。初めは拘縮の除去に主眼があったが、動きが出てきてからは、手関節(手首)の背屈、回外など範囲が拡大して、また場所も電車の中などどこでも暇があれば行った。

親指の内転・外転

・親指以外の指を伸展にしておき、親指を手のひらにつけたり開いたりする。

<注意点>
・伸ばしている四指を固定すると、親指の内・外転がしやすい。
・親指を外転するときは、完全に手を開くようにする。
・親指と人差し指の間の腱が伸びにくい時は、ゆるめる訓練を行う。


指の分離

・親指→人差し指→中指→薬指→小指の順にゆっくりと曲げる。
・人差し指を曲げる時、中指・薬指・小指を押さえ、固定するようにする。
・伸ばす時は、、曲げるときとは逆の順番に小指から伸ばしてゆく。

 かなり高度な脳からの命令伝達を必要とする動きである。



ワッカ作り

・ 親指と人差し指、親指と中指、親指と薬指、親指と小指を順に合わせていく。
・ 逆の順番に指をつけていくのは、難しいがTryしてみよう

<注意点>
・ これができると、三つの指でつまんだり、二つの指でつまんだりすることができる。



親指と四指の交互屈伸

・ 親指を外転にしたら四指は屈曲させ、親指を内転にしたら四指は伸展させる。

<注意点>
・ 親指と四指の動きの切り替えは、ゆっくりとおこなう。
・ 四指を握るときに親指が一緒に曲がって、握った手の中に入ってしまう場合は補助してもらう。


手遊び

・ 手の回内・回外を行う。このとき、右の手のひらが上を向いているときは、左の手のひらが下を向いていて、右の手のひらが下のときは、左の手のひらが上を向くようにする。
・ 両手を交互にグーパーをする。
・ 音楽に合わせて手を開閉すると、リズムが取れてやり易い。




(7) 腕の動きづくり


指と同時に、腕の動きづくりにも努めた。肘の動きを前後・左右に大きくする、それには上腕三頭筋の強化が必要。また肩の動きも、三角筋を太くして上下・前後・左右への動きの範囲を拡げる。


押す(前へ)・引く(手前へ)

・緊張が出にくい、高さは低めの机と椅子に座る。
・中に水を入れ、少し重くする。写真のアレーは水を一杯にすると、1キロになる。
・麻痺側の手でアレーの棒の部分を握って(健側の手で補助して握りをしっかりさせる)、前方へ押し、移動させる。
・腕の伸びたきった地点に赤ポッチ等の印をつけて、それを目標にする。
・次に、手前へ引く。10回くらい繰返す。

<注意点>
・肘関節に拘縮があるとなかなか腕が前方へ伸びない。こういう時は、無理をせず健側の手で補助すること。そうしないと、伸筋の代りに屈筋が強くなって逆効果になる。
・次第に楽に押すことが出来るようになる。

・病院にはチャンとした道具があるが、自宅でのトレーニング用には写真のような手作りの物で十分。少し固めの箱の底を刳り抜き、アレーの片側の円形部分をはめ込む。底の部分には、フェルトを張り付けて滑りを良くしてある。
・砂袋でも出来る。


ペグ棒の移動

・緊張の出にくい低めの机と椅子に座る。
・両手を組んで、両手の親指と人差し指でつくる輪っかにペグ棒を通し、それを両手で抑えて引き上げ、別の穴に移動させる。
・遠い位置のペグ棒を抜くときは、身体を前に出さず、しっかり腕を伸ばすことが必要。





机みがき

・机の上でタオルを持って、真っ直ぐ腕を伸ばす。ゆっくりと腕を右横へ扇を開くように移動させる。
・次に、逆に右横から始めて、正面へ戻す。20回繰返す。

<注意点>
・緊張があると、指先が丸まってきてタオルをちゃんと持てなくなる。タオルを手に巻付けるといい。
・肘、肩がしっかりして来ないと、腕が伸びず、だんだん描く弧が小さくなる。
・病院のリハビリでは、滑車の付いた板の上に手を置き、マジックテープで手を縛って固定して訓練した。


吊り輪

・両手に吊り輪の輪を持ち、交互に腕をゆっくり上下させる。
・麻痺側の腕は出来るだけ自力で、健側の力を借りずに上げること。
・肩の三角筋が十分伸びる感じがするといい。回数は自由だが、緊張が出る前に止めること。

<注意点>
・病院にはちゃんとした設備があるが、自宅では写真のような簡易型で十分代用できる。ぶら下り健康器に、バッグの取っ手にする輪っかを両端に付けた、縄跳びの紐をぶら下げただけである。


(8) 発 症 時


最初の6ヶ月、所謂急性期といわれる時期で、回復はここまででこれ以降は横這い(プラトー)状態になると一般的には言われている。私の場合、○ プロフィールの「障害の程度」をご覧頂きたいが、右手の指、手首、肘、肩、右足の指、足首等の可動域はゼロでプラトー状態とみなされ、全廃・廃用と診断され、障害の程度は1級1種となった。

従って、このころのリハビリは緊張を緩めることに主眼が置かれたメニューとなった。リハビリというより治療の一環という色合いが強かった。これを続けていたことが、今の改善に繋がっていると思う。

肩関節伸展

肩に緊張が強く肘が脇について伸ばせない場合、肘が後方に引かれる異常な緊張を緩める運動。
対象者を仰向けに寝かせ、手のひらを上にして手関節を持ち、肘伸展のまま肘を上に持っていく。

<注意点>
上腕の筋肉に触れると、筋肉を刺激して屈曲になるので、肘を手指伸展のまま上げるようにする。

肩関節伸展

肩の緊張を除き、肩甲骨の動きを楽にし胸郭を広げ、呼吸量を増やす。
対象者の両肩をやさしくつかみ、肩を開く感じで後ろに引く。引いたまま、しばらくそのままにする。

<注意点>
背骨に膝を当てたりすると背中が痛いので、無理に背骨を圧迫しないようにする。
肩を後方にそらせすぎると、呼吸しにくくなるので要注意。


手関節伸展

手関節と肘の屈曲の異常緊張を除き、伸展に切り替えて、手を前に寄せ易くする。肩関節の固定をはかり、手を動き易くする。
手のひらは床につけ、指をしっかり伸ばす。この状態で10分続ける。

<注意点>
肘が伸びない場合は、健側の手で肘が曲がらないように固定する。
指が伸びないで曲がってしまう場合は、指の上に重しを置くか、健側の手を重し代わりにして指の曲がりを防ぐ。


肘回内拘縮の緊張除去

肘の伸展と三角筋の筋力強化。
対象者を仰向けに寝かせ、手のひらを床につけ、押さえる。上がっている肩関節を上方に引っ張るようにして下におろし、押さえる。
肘の屈曲拘縮がゆるんだら、手のひらを上にむけ、肘に手を当て伸展のまま上へ挙げる。



アキレス腱伸展

尖足を予防し、腱と筋の緊張をゆるめ、踵をつけやすくする。
対象者の踵を手のひらでひっかける。もう一方の手は、足底の所を押さえる。踵をゆっくり引き下ろしながら、同時に足底に当てた手を前に押す。

<注意点>
反動をつけて伸ばさないこと。足指にさわると、足指が屈曲するので、さわらないように気をつける。


片膝立ち

片脚立ちの支持筋力と反対の遊脚の足関節背屈の動きを引き出す。
対象者を膝立ちさせる。腰の幅に膝と膝を開き、腕は下げ、背筋を伸ばし、顔は正面を向く。
麻痺側の足を前に出し、しばらくその姿勢を保ってから戻す。10回繰返す。
補助者は、対象者の腰が曲がらないように、片足の膝立ちの姿勢が前傾にならないように支持する。

<注意点>
動き始めが困難な場合は、肘を前から持ち、上半身を支え補助する。
鏡の前で行うと、姿勢のチェックが出来る。


手を真ん中に寄せる

肘関節の屈曲を消し、両手動作が出来るようにする。
対象者を仰向けに寝かせる。健側の腕を真ん中に立て、麻痺側を肘関節伸展のまま寄せる。



股関節伸展

補助者は、対象者の足元に座り、片脚を曲げさせ膝を腹部につけ骨盤を固定させる。
反対脚の上がっている大腿部を下に下ろすように押して股関節の屈曲を伸ばす。



座位腕上げ下ろし

肩の三角筋と背筋の筋力強化
対象者を座位させ、両腕を上げさせる。自分で腕を上げるのが困難なときは、補助者が後から腕を補助する






(9) 足の動きづくり



手に関しては、(6)指の動きづくり(7)腕の動きづくりで具体的にリハビリの内容をご説明したので、ここでは足のリハビリについてお話したい。


足に関しては、正しく歩くことを目標にしていたことと、通勤のこともあり慎重に対応してきた。膝下で止める装具は、動く方向が決まっているので、不正確な足の動きを抑制し、正しい動きに矯正してていく。特に、ぶんまわし歩行の矯正には注力して、3年間に2足履きつぶした。

3年後の昨年(平成12年)5月にインナーサポータに換えた。



これはプロフッターという名の内反・尖足防止用の短下肢装具で、足先から履いて足首をぐるっと巻いて、止めるようになっている。

靴の中に履くことができるので、サイズが少し大きめで、紐の代わりにマジックテープで止められる靴を使用することにしました。

医者の勧めで試してみたところ、足首はしっかり保護されるし、装具に比べとても軽くて歩き易くなったので、通勤に使用することにしました。

それから半年後には靴紐が結べるようになったし、かなり正しく歩けるようになったので、この短下肢装具を止め、紐で結ぶ普通の靴に換えました。

短下肢装具を着けなくても、内反足はほとんど気にならない状態にまで改善しているが、尖足は残っており、朝寒い時、体が温まっていない時とか、階段を昇る時足先が引っかかることがある。また、踵が地面に着いた時、同時に足裏全体がバタッと地面に着いてしまう。したがって、右足が着地する度にバタッバタッと音がする。これを無くすことが当面の課題だ。


アキレス腱伸ばし

上半身を支えるための足関節背屈筋の筋力強化と尖足を防ぐ。

角度を調節できる傾斜板(初めは15度位に設定して)に、踵止めのある側に踵がくるように両足で乗る。前かがみにならないように体を真っ直ぐ伸ばす。10分間を2〜3回繰返す。慣れてきたら角度を20度、25度ときつくしていく。

<注意点>
初めは角度のある傾斜板に乗るのに一苦労する。壁を背にするとか、コーナーを利用するとか、万一バランスを崩しても安全なように工夫が必要だ。
写真の傾斜板は、王様のアイディアで見つけた足の疲労をとるための健康グッズです。

(10) 字を書く練習

動きが出始めたのは発症してから2年経過してからだった。これ以降は一段と筋力強化に力が入っていった。そして4年経過した今、自分の してきたことが間違っていなかったという確信が強まってきた。同時に、どこまで動けるようになるか、第2ステージのスタートである。

字を書く練習

この写真は、最近試しにあるデータをメモ用紙に右手で書きとったものです。

一応判読は出来ますよね? 字の大きさのバラツキが少ないのは、一字一字ゆっくり、丁寧に揃えて書いたからです。(実際は、頭では速く書きたいと思っても、右手がついて行かない)

下段にメモ(四日市、石倉、450‐4100)してあるのは、右手の練習中に電話が掛かってきたので、右手に受話器を持ち、相手の連絡先を左手で書いたものです。

右手と左手を比較すると良く判りますが、明らかに右手の筆圧が弱いため、字が弱々しいです。利き手変換で左手でそこそこ読める字が書けるようになりましたが、早く右手でしっかりした字を書きたいと思っています。

今後の問題点・改善点は、次の二点です。
@筆圧を強くする。(現状では、ノーカーボン紙の2枚目以降には写らない)
A継続する力をつける。(今はこの程度が限界で、右肘が重くなってきて、右腕が固まってくる)


再び右手で字を書くためのリハビリ

線を引く(点と点を結ぶ)

(1)点と点の間隔は5センチ程度、左から右へ、ゆっくり動かす。
間隔を短めにする理由は、字はあまり大きく書かないし、不随意な動きを少なく抑えることにある。
注意点 : だんだん右下へ下がってくるので、意識としては、斜め右上へ書く感じ。

(2)上から下へ、点と点を結ぶ。
(3)縦⇒横⇒縦⇒横の順で四角を作る。
(4)斜め左下、斜め右下へ真っ直ぐ動かすのが難しい。膨らんだり、凹んだりし易い。


線 割 り

罫線を横にして、二本罫線の真ん中を割って横に線をひく。







罫線を縦にして、二本罫線の真ん中を割って縦に線をひく。


線割りは、漢字を書くとき線を二等分や、三等分に割る字が多いので(例えば日は二等分、目は三等分)、開き・間隔をとれるように練習する。



(11) 拍手の練習

@ 両手を同時に動かし、視界の中で両手の手のひらを合わせる運動を繰り返す。
A できるようになったら、リズムにのせて手を打ち合わせ、音をだす。

<注意点>
@ 麻痺側の肩や肘の緊張を除き、特に肘がつっぱらないようにする。
A 麻痺側の指を真っ直ぐ伸ばし、両手が真ん中でしっかり合わさるようにする。
B 反復の拍手は、両手を開くとき、閉じるときも同時に、同じスピードで動かすことが肝要。どうしても健常側の手の動きが早く、大きくなりがち。


(12) リハビリは一人では出来ない

最近買った本に「脳卒中が起こったら」講談社がある。この本の基本コンセプトは「直すのはあなた自身です」です。ただ、リハビリを行っていく上で、さまざまなサポートが必要です。




入院中にはなかなか気付かないが、リハビリの成否は多くの人々のチームワークに支えられている。リハビリも患者毎に、医師・看護婦・専門家が医療チームを組んで進めます。家族も重要な位置を占めます。したがって、患者本人・家族・医療チームの三者の連携が最も大事だ。


(13) 4度目の正月

2002年の正月は、病気してから4度目の正月になるが、リハビリの成果がはっきりと形になって現れた。相当健常者に近い動きが出来るようになってきた。右手足に麻痺があるというより、多少不自由だなという感じになった。(「発症した当時」と比較)


@ 右足一本で地面をしっかり捉まえる

左足を上げた時、右足一本で立って、一瞬静止して力を溜める。
左足を踏み出すと同時に、腰の回転を利用して捻りを戻す。








A 右手が役割を果たす

右手でしっかりバットを握る。バットコントロールの上で右手の役割は大きい。
ボールの縫い目にそって、柔らかく握り、肘を肩の高さまで引き上げると、手首の位置も肩まで上がる。



B 走りの型になってきた


障害者にとって、”走る”ことは最も難しい部類に入る。

これらが全て改善しないと、きれいな”走り”は実現しない。
特に手足のバランスが崩れやすい。



C 片足立ちで1分

右手が動くようになったので、バランスがとりやすくなって、楽に片足立ちが出来るようになった。
これが出来るようになって、電車・バスなどの乗り物の揺れにも対応する自信がついた。<「変化(Change)」のページの「(9) 杖よさらば」を参照>










(14) 鏡の効用


1999年末発症から1年半経った頃、右手の指はピクリとも動かなかったが、当時読んだ「脳の中の幽霊」V.S.ラマチャンドラン著(「参考文献」参照)の中に「バーチャルリアリティ」装置として、鏡を設置した箱という単純な装置を使って、患者に正常な手足を見せることで、効果をあげることを発見したとあった。

その一文に『脳卒中の後、腕が使えなくなるのはどうしてか?脳の血管がつまると、脳の前方部から脊髄におりている神経線維が酸素不足になって損傷を受け、腕が麻痺する。しかし脳卒中の初期段階では、脳が膨張して、一時的に一部の神経が死んでしまう状態になるが、他の神経も文字どおり気絶状態となり、いわば「オフライン」のままにおかれる。

腕が機能していないあいだに、脳は「腕が動いていない」という視覚のフィードバックを受ける。膨張が治まったあとも、脳は学習された麻痺の状態にとどまっている可能性がある。

鏡の仕掛けを使って、麻痺の学習による部分だけでも解消することができるだろうか?
とあった。

本の中でこの鏡を設置した箱の説明はあるが、どんな物で、どう使うのかもう一つピンと来なかった。


取り敢えず、簡単な方法で試してみた。右の写真のように、鏡を体の正面に、写る面が左をむくように置く。そして、顔をやや左に傾けて鏡に写る左手が見えるようにする。こうすると鏡に隠れて右手は見えない。その代わりに鏡に写る左手があたかも右手のように見える。

例えば、左手の指の曲げ伸ばしすると、鏡のなかの右手(本当は左手)の指も対称形として動く。これだけでは単に左手を動かしているだけで、別に何ということもない。

ポイントは、左手(健常側)と同じ動きを、介助者に協力してもらって右手(麻痺側)にもさせることだ。左手の動きに合わせて、本当の右手(鏡のなかの右手ではない)を動かすことに意味がある。((6)指のリハビリに具体例あり)

右手が動いているという情報が2つのルートを通じて脳に伝わる。1つは右手の先端の感覚情報が大脳の体性感覚野へ、そしてもう1つは目から入る情報、鏡のなかの右手が正しく動いているという視覚情報で確認をとっている。

これらの情報が大脳の運動野に集約されたときに、運動野が壊れていなければ「指令」となって、右手の先端の筋肉を動かすことになる。((5)私のリハビリを参照)

これを継続的に繰り返しているうちに、壊れている部位の周辺にバイパスが形成されていき、「指令」が伝達されるようになる。人間の脳にはそれだけの可塑性があるということだ。


この鏡を設置した箱を実現した人が日本にもいる。前衆議院議員の栗本慎一郎氏で、ご自身が平成11年秋(1999年)に脳梗塞になられたときに考案した「栗本式鏡箱(クリミラー)」だ。(詳しくは栗本氏のホームページを参照)
翌年栗本氏に実物を見せて頂き、「脳のなかの幽霊」にでてくる物がどういうものかよく判った。


(15) 鍛えて力をつける必要はない


間違えやすいのが「鍛えて力をつける」ことの意味である。

ご存じのように、手足には伸筋と屈筋の拮抗する二種類の筋肉がある。例えば、腕に上腕二頭筋と上腕三頭筋があり拮抗して働く。肘を曲げ伸ばしする時、伸筋である上腕三等筋が働くと腕は伸展し(同時に屈筋は弱まる)、逆に屈筋である上腕ニ頭筋が働くと腕は屈曲(同時に伸筋は弱まる)する。

通常は大脳あるいは脊髄が、微妙な強弱をコントロールし、曲げ伸ばしの強弱を正しく筋肉に指令するが、脳卒中になるとこの正しい指令が全く出ないか、誤って出されるため、肘が曲がったままになってしまったりする。
2.リハビリの心得、 3.目 的 参照)



「脳と運動」のページで紹介した「リハビリテーション」上田敏著の中に「原始的な共同運動を強める訓練は有害」とある。

筋力が落ちただけなら、その筋肉を使って(鍛えて)力をつければいい。

しかし、脳卒中のような中枢性麻痺は、普通の人が思うような「力がなくなった」という状態とはまったく違うということである。「力をつける」訓練はまったく逆効果で、原始的な共同運動を強めるばかりで、かえって有害なのである。

脊髄レベルの下位運動中枢においては、屈筋共同運動と伸筋共同運動とはお互いに抑制しあう関係にある。つまり、脊髄の中の細胞に屈筋系の細胞伸筋系の細胞という二つのシステムがあって、これらはお互いに拮抗している。屈筋系が働くときは伸筋系は抑制されて、伸筋系が働くときは屈筋系が抑制されるのである。
「脳の世界」のページの「15.脳の運動機能回復の順序」を参照)


例えば、砂を入れたバケツを持ち上げる訓練は、屈筋系の神経回路だけを繰り返し使い、伸筋系の神経回路を繰り返し抑制することになる。そのために伸筋系の機能(伸筋共同運動)の回復はブロックされ、屈筋系(屈筋共同運動)だけがアンバランスに”回復”し、その結果腕を自分の意思で伸ばすことができなくなる。

伸筋の運動というのは物を押す運動で、これを訓練することはなかなか難しい。そのため「筋力を強める」というつもりで自己流の訓練をすると、どうしてもやりやすい屈筋系の筋肉だけを使うようになるのである。「7.腕の動きづくり」参照)

足の場合は逆に、歩くときに体重を支えるのは伸筋系なので、自己流に歩く訓練ばかりをやっていると伸筋系だけが強くなって、屈筋系の回復が邪魔され、足が突っ張って膝が曲がらなくなるということが起こる。

足を前に出そうとしても、膝が曲がらないので、棒のような足のままで腰をひねって足を前に出すという非常に強ばった歩き方になる。(「9.足の動きづくり」参照)

リハビリというのは、ただ動かせばいいというものではない。それこそ賢く動かさなければ、とんでもない悪い方向に自分自身を追いやることもある。

いい方向の訓練をすれば、脳の一部は壊れても、生き残ったところを最もうまく効率よく使う状態にもっていくことができる。

良くなりたい一心から「頑張ります」ということがあるが、むしろ肩の力を抜いて「頑張らないで、スマートにやります」と言えるといい。脳からの指令を脊髄に伝えて、うまくいうことをきかせようと思うときは、頑張らないで、いろいろな動きをスマートに、力をいれないでできるようにすることが大事なのである。

例えてみれば、肩に力を入れたからといって、上手な字が書けるものではないことと同じなのである。

リハビリの目的いろいろな動きの、繊細でデリケートで巧みな運動をバランスよく回復させること、コントロールすることであり、力を回復することではない。


(16) 5年経って判ったこと


この7月(平成14年)で発症から丸5年になる。日常生活で不便を感じることはほとんど無い。一生車椅子生活と覚悟を決めていただけに、見た目障害がわからない程度までよく回復したと思う。

何が良かったか考えると、一言でいえば「何事も常に前向きに考え、決して諦めなかったこと」である。
『病は気から』というように、身体より気持ちから先に病気になるというが、反対に病気が治るときも「気持ち」の持ち方が大事である。l

「半年過ぎると目にみえた変化(改善)は見られなくなる」という医学界の常識は信じないことだ。医者にこう言われると、患者は宣告を受けたと信じてしまうので、改善し、治るものもその機会を喪失してしまう。とても残念なことだ。
(1) 一般論を参照)

確かに医者が患者を診るのはせいぜい半年で、以降はリハビリ施設へ転院したり、自宅でセルフ・リハビリしたりで、医者のカルテにはその後の患者のデータが蓄積されない。

従って、医者は患者に退院後どういう変化があるのか判らないし、また半年過ぎると保険請求のポイントも落ちるので、いつまでも診てはいられないし、判らなくても困らないのが実態である。

患者にしても、半年リハビリを続けてくると、疲労感が出てくるし、リハビリの効果に疑問を持ち始め、弱気になってくる。しかも医者っから「もうこれ以上は期待できない」と宣告されるし、改善しようという意欲が萎え、挫折するケースが多いと思う。

脳の状態で見ると、半年程度で改善した動きというのは、もともとダメージを受けていない部位だから、腫れがひいたことで回復したのである。ただダメージを受けた部位の近くだったために影響(余波)があったものである。
「脳と運動」の(15) 脳機能の再編成を参照)

ダメージを受けた部位のバイパスが出来るまでには、年単位で相当時間が掛かる「脳と運動」のページで紹介した「リハビリテーション」上田敏著にあるように、

脳卒中で手足の麻痺が起きたということは、脳の運動野の手足の神経に命令する大事な回路が壊れたということだ。いわば、東京から福岡にいく新幹線が途中の事故で壊れて、修復不可能になった状態と同じである。

それでは、東京から福岡へ行く道はないのかといえば、ローカル線を乗り継いで行けば、非常に時間はかかるし、乗り換えなどの手間が大変かもしれないが、東京から福岡へ行くことは不可能ではない。

それと同じように、いままであまり使われなかった、たくさんのシナプスをたどっていって、やっと目的のところへ到達するということが脳の中でも起きる。

しかも、繰り返しやっていると、そのシナプスはだんだん通りやすくなる。最初は大変な努力をしなければ動かせなかった手足が、だんだん動かしやすくなるのは、この為だ。



脳の中の変化(バイパス)には時間がかかる。その間治すんだという気力を持ち続けること、リハビリを続けることが絶対に必要だ。

リハビリを継続していないと、筋肉に拘縮がおきて、関節が硬くなってしまい、いざ脳からの命令が届くようになった時に関節が動かなくなっているという事態になる。

2.リハビリの心得、 3.目 的 参照)

特に、手首・指先は常に(健常側の手を使って)動かすことをお勧めする。拘縮を防ぐとともに、指先からの感覚情報が脳に送られ、脳の刺激になり運動野のバイパス造りの手助けにもなるからだ。

そして、バイパスが必ず繋がることを信じて、動くようになるまでリハビリを続けていこう。


(17) 綺麗に歩くには

病院で車椅子に乗っているときから、『何時か必ず元通りに直って、昔のように綺麗に歩く』を目標に、それを目指してリハビリに取り組んできた。

(5年経った現在の状態は)重心は左右均等にかかり、その移動はスムースに出来る。

手は、以前はきちんと振れず不規則に動き、腰や腿によく当たっていたが、最近はコントロールできるようになった。

足が一番問題で、右足(麻痺側)による蹴りと右膝が伸びないことである。右足を前方に出す時、まず踵が地面から離れて、足先で軽く前方に蹴りだす動作があるが、足首が固くてこの一連の動作が出来ず、足裏全体で動いている感じ。他人から見ると、多少足を引きずって、動きが遅いな、足が不自由なのかなという風に映る。

右足が着地する時、右膝が伸びきらずに曲がったままなので、目測した地点より実際には手前に着地している。階段の上り降りの際には、この僅かな違いが足を引っ掛ける原因になる。馴れれば大きな事故に繋がる事はないけれども、きちんと歩けないことが不愉快になる。

先日病院へ行った際、理学療法士に上記の説明をして、アドバイスを求めた。
私の歩きを、前から後ろから見た上で、『ここまで回復したら、もっと大股で歩いても大丈夫。ちゃんと右足に重心が乗っている。』、そして右膝を伸ばし、足首に柔軟性をつけるのに、右の写真のストレッチがいいと教えてもらった。

膝を伸ばすストレッチ

効果的な器具はあるけれども、器具のあるところでしか出来ない欠点があるのに対し、このストレッチは手軽に何時でも、何処でも壁があれば出来る点が優れている。

左右1分づつ交互にやっているが、結構ハードで10分もやると、手が疲れて(特に右手)固まってくる。固くなると、しっかり壁についていたはづの掌が、丸まってくる。こういう状態になったら、続けても逆効果になるだけなので中止する。



(18) 筋力トレーニングのやり方

「変化(Change)」のページに「(13) 平成15年の新しい目標」に、今年は器具を使って細くなっている拮抗筋の強化を掲げた。ただし、拮抗筋だけを効果的に強化することがどれだけ難しいか!

「(16) 鍛えて力をつける必要はない」でその辺の難しさを述べたが、この気持ちはトレーニングを始めた現在も変わらない。
私の住んでいる武蔵野市の市立体育館トレーニング室には様々な器具が揃っている。各人の目的に合わせて、体力のバランス・年齢等に応じて器具を使ったエクササイズ、体操やストレッチを組合わせてメニューをつくる。

最初にビギナー講習を受ける必要がある。そこでインストラクターに、「5年前の40台後半に脳梗塞で右半身麻痺になったこと、今は装具・杖不要になったこと、ハンドルを握る・持ち上げる等も出来るようになり、多分器具を使ったトレーニングが可能になったこと」を説明した。

私が筋力トレーニングを取り入れたいと考えた目的は二つある。

  1. 拮抗筋の一段の強化を図り、伸筋と屈筋のバランスを回復する。
  2. 年齢からくる老化を防ぐために、全体の筋力UPを図る。

【筋力トレーニングの基本原理】


【トレーニングマシンの種類】

市体育館のトレーニング室には、筋力トレーニング機器が三種類ある。

各種類にはチェストプレス、ラットプルダウン、バックエクステンション、レッグエクステンション、レッグカール、アブドミナル等があるが、名前からは何をするものか、どの筋肉を鍛えるものなのか、どう使うのか判らない。

また、エアロバイク(自転車をこぐ運動)、トレッドミル(ウォーキングやジョギングを行う)、ステアクライマー(階段を上るようなステップ運動)等は、燃焼・シェイプアップ・持久力アップなどに使うもので、有酸素(持久力)トレーニングマシンと言うようだ。

私が鍛えたい筋肉は次の通り。

今後、筋力トレーニングの効果をレポートしていきたい。






(19) トレーニングマシン

筋力トレーニングには、様々な目的がある。

当然その目的によりトレーニングマシンの使い方も違ってくる。私の場合は、失われた筋力の回復が目的である。

一般に、日常生活で使われる筋肉は、全体の2割から5割程度だといわれています。刺激の行き届いていない筋繊維は、毎日数万本単位で消滅するそうだ。

筋力不足が引き起こす弊害は様々です。基礎代謝の低下による肥満、腰・膝の痛み、全身倦怠感から活動量の低下と悪循環が発生します。将来、筋力不足による寝たきりになる確率が高くなります。

これらを防止するためには、最大強度の運動の50%から80%程度の運動を習慣的に行う必要があるといいます。

急にやり過ぎて故障しないよう、そしてトレーニングの効果を充分に得るために、始める前に講習を受けることが肝要です。

【筋トレする際の注意事項】


【最適な筋トレメニューを作る】

  1. メニューの組み合わせ : 拮抗筋、すなわち前後のバランスを良くするため、大胸筋と広背筋、上腕二頭筋と上腕三頭筋、腹筋と背筋、大腿四頭筋と大腿三頭筋(ハムストリング)のように前後に位置し、お互いに補い合っている筋肉に注意が必要です。拮抗筋のバランスが崩れると動きだけでなく、筋肉や関節を損傷することがあります。
  2. トレーニングの順番 : 一般的に小さい筋肉(小筋群)は、大きい筋肉(大筋群)に比べて発揮できる筋力は小さく、疲れやすい。多くの大筋群のトレーニング種目では、小筋群も動員されるので、原則として大筋群を先に鍛える。
  3. 筋肉トレーニングの間隔 : 先に述べたように、筋肉の超回復がないと疲労が溜まるだけで、筋肉が衰えてしまうトレーニングの間隔は48〜72時間、すなわち2〜3日おきにするのが効果的といわれます。


★ トレーニング室でのマシンを使っている私の写真を撮ることは禁止されているので、他のものを使用しました。

<チェストプレス>

  1. バーが胸の真ん中の高さにくるように、椅子をあわせます。背中・頭を背もたれにぴったりつけて座り、足もしっかり床につけます。
  2. 胸がよく開いたところからスタートします。バーを前に押し、肘が伸びきる手前まで行ったら元の位置へ戻します。

 (ポイント)

 (7) 腕の動きづくりで述べた「肘の動きを前後・左右に大きくする、それには上腕三頭筋の強化が必要。また肩の動きも、三角筋を太くして上下・前後・左右への動きの範囲を拡げる。」
これまで器具を使わずに伸筋を強化してきたわけだが、ここまで回復したので、今後はマシンを使っての強化に移行しようとするものです。


<レッグカール>

  1. 膝が軸のところにくるように寝て、アキレス腱の少し上にパッドのを合わせます。
  2. ゆっくりと膝を曲げ、かかとを尻につけるつもりいでうんと頑張ったら、ゆっくり戻します。
  3. 膝を伸ばした時は、膝が入りきる手前で止めるようにします。

  (ポイント)

 (17)綺麗に歩くにはで述べたが、アキレス腱・膝そしてももが全て連携して伸びたり、曲がったりしないとスムースに歩けない。どこか一つでもうまく機能しないと動きがギコチないものになる。



(20) ストレッチを充分に

市体育館のトレーニング室で筋力トレーニングマシン・チューブ・ダンベル・有酸素トレーニングマシンあるいは器具を使わずにする方法など、いろいろ試しているところ。

(19)トレーニングマシン[筋力トレーニングする際の注意事項]で触れた、トレーニングの最初と最後にストレッチを行うことは、私のように病気で筋繊維のバランスが崩れている場合には、このストレッチを一段と時間をかけて充分やることが大事だと思う。

特に、「ふくらはぎ」「アキレス腱」のストレッチは念入りに充分行うようにしている。筋トレマシンを使って最も負荷を掛けている部位だけに、充分緊張をほぐしておかないと、不自然に筋肉がついてしまう。

<ポイント>

<ウォーム・アップ ストレッチ>


























<クール・ダウン ストレッチ>
































(21) CI療法:上肢の集中訓練 


2005年6月13日読売新聞の<最新医療>に紹介された「脳卒中…新リハビリ法」は久々のGreat News!

CI療法(Constraint induced movement therapy)という、欧米ではスタンダードな治療法なようですが、脳細胞の可塑性を最大限に引き出すように、指の集中訓練を行うことで効果を挙げているリハビリ法が紹介されている。

兵庫医科大学篠山病院リハビリテーション科では、毎日5時間2〜3週間で効果が出ている。患者さん20人中14人に改善が見られ、なかには発症から16年経っている人もいたそうです。

ただし、この治療を受けるには基準をクリアする必要がある。
 (1) 麻痺している側の手首が、手の甲の側に20度以上動かせること
 (2) 親指を含めて他の指が10度以上伸ばせること


          <適応基準>

国内で多数の患者さんに実施している医療機関はまだごく僅かだという。
理由の一つは、この治療の対象者がかなり限定され、脳卒中片麻痺患者の2割程度であること。
二つ目は、医療機関が請求できるリハビリの診療報酬が短時間に限られ、作業療法士が長時間患者に付き添うには見合わないため

CI療法を行う主な医療機関
  兵庫医科大学(兵庫県西宮市)
  兵庫医科大学篠山病院(兵庫県篠山市)
  慶応大学病院(東京都新宿区)
  自衛隊中央病院(東京都世田谷区)


リハビリの目的には二つの側面がある。
  (1) 麻痺した上肢を訓練して機能を回復させること。
  (2) 麻痺していない(健側)の上肢で代償させること。

リハビリの現場では、(1)をやっても「実用にならない」として早々と見切りをつけてしまい、むしろ限られた時間の有効活用として最初から(2)に特化した訓練を行う医療機関・医師が大半である。

しかし、脳卒中患者のリハビリに対する期待は正反対で、麻痺した上肢の機能回復にある。「麻痺している方をリハビリしてもらいたいのに、いつも麻痺していない方の使い方ばかりを訓練される」という不満は患者共通のものです。

「いつまでも障害の回復に固執するのは間違っている」「はやく障害を受容すべき」という言葉を度々医療関係者から聞きますが、これは患者にとって尊厳を傷つけられ、人格を否定された気持ちにさせられるものです。

このCI療法は患者の思いを実現させる大きな原動力になると確信します。
兵庫医大リハビリテーション科の言う「強く推奨され、実施されなければならない治療法」だということを、全国の医療機関が気付き採用してほしいものです。
兵庫医大リハビリテーション科のCI療法


(22) NHK生活ホットモーニングは脳の可塑性とリハビリがテーマ


 2007年3月14日放送のNHKテレビ生活ホットモーニングで「脳の世界を探るリハビリ最前線」と題し、麻痺した部分を集中的に動かし続けることで、脳の機能が回復することを、医療現場のリハビリの様子を通して紹介しました。
<http://www.nhk.or.jp/hot/onair_old/index.html>


脳卒中のリハビリは急速な進歩を遂げている。脳の可塑性の研究が進み、脳梗塞や脳出血で組織の一部が死んでしまっても、脳はその役割を別の部分が補うよう柔軟に変化する。

麻痺した手首を動かす訓練を短期間に集中的に行うことで、お椀を手に持って食事が出来るようになり、字が綺麗に書けるようになり、さらにスナップを利かせてビーチボールを投げることが出来るようになったこと等が紹介された。

前項の(21) CI療法:上肢の集中訓練 で紹介した兵庫医大における、CI療法によるリハビリの治療風景が登場した。 
兵庫医大リハビリテーション科のCI療法
ここでは、作業療法士が患者の能力に合わせて60項目におよぶ課題をプログラムしている。そして、その課題を一つずつ達成することで麻痺した手の機能を回復していく。

脳の可塑性については、大阪の森之宮病院でおこなわれた脳の可塑性を示す治療例が紹介された。
左ひじを動かす神経のネットワークが損傷した患者に対し、特別な器具を使ってひじを動かすリハビリを行ったところ、ひじの曲げ伸ばしに関係しない、他の動作をつかさどる部分や、反対の右腕をつかさどる部分までが左ひじを動かす命令に加わっていることが分かった。


以上がこの放送の概要ですが、
脳の可塑性は私がいろいろな文献を調べで紹介してきたことと一致します。

そして、このページリハビリの冒頭の(1)一 般 論に宣言した通り、私は脳の可塑性を信じてリハビリを始め、その回復過程は、この放送で紹介された臨床例と符号します。


私が脳梗塞を発症してから10年。 この間、最先端のリハビリ医療が当時とは比較にならない程進歩したことで、発症から年月が経過して後遺症に悩んでいる多くの脳卒中患者にとって、「決して悲観ばかりするものではないぞ」という希望の光を灯すものになるでしょう。
(ただし、改善の可能性をチェックするために、医師による事前の評価・判定が必要とのことで、すべての患者に適用できるのではない)



(23) NHKスペシャル「闘うリハビリ あなたはここまで再生できる〜脳がもつ可能性〜」


 2008年2月10日(日)午後9時放送のNHKスペシャル「闘うリハビリ」第1回あなたはここまで再生できる〜脳がもつ可能性〜をご覧になった方は多いと思います。
私の感想は「十年一昔」で十年前には想像も出来なかったことが、今は医療の最前線で、脳科学と画像診断の発達によりリハビリを大きく変えようとしている事実に驚き、隔世の感を強くしました。

これまでは、療法士の経験と勘に頼った手探り状態で行わざるを得なかったリハビリが、何をしたら脳内に新しい回路が構築されるのかその効果をリアルタイムで眼で確認しながら、個々人に最適なリハビリのメニューを作成できるようになったことは革命的出来事だと思います。

脳の成長は生後数年で止まるものと思われてきたが、1990年台になってから脳の可塑性、脳の柔軟性がネズミなどの動物実験を通じて実証されるようになり、次は人間にこの脳の潜在能力を如何に発揮させることが可能かに焦点が当たっている。

リハビリの手法は今後大きく変らざるを得ないと思います。
現在CI療法がかなり普及してきたと思いますが、基本的には身体の運動機能を回復させるものと捉えられていた。
これからのリハビリは、損傷した脳内の回路の再構築することにより、結果として身体の運動機能を取り戻すことに主眼が置かれることになる。

前章(22)脳の可塑性でも述べたように、この理論は、リハビリの冒頭の(1)一 般 論に宣言した通り、私は脳の可塑性を信じてリハビリを始め、10年掛けて実践してきた回復過程と一致します。

また脳の可塑性はで紹介してきたことと一致します。


個人が自宅でやるリハビリは、運動能力の回復が目的ではなく、結果だと思います。
リハビリのメニューを作る際必要以上に高いノルマを課したり、出来ないことを目標に掲げたりすることは反って拘縮を招いたりして逆効果だと思います。

リハビリの目的は、損傷した脳内の回路を再構築・再生することにあり、日頃から手足の関節・筋肉の柔軟性を確保するためのストレッチを続けることにあると考えます。そのリハビリを続けることが、継続的に脳を刺激することとなり、新しい回路の構築・再生を促進することに繋がると考えます。